理系大学院生の勉強、研究、日常etc...

私立薬学部卒業、国立の大学院生。バイオ系(?)。機械学習。Python。

乳がん治療薬 #1

乳がん Breast cancer

 

腫瘍マーカーCA15-3CA125

乳がんはタイプにより治療戦略が変わります。

 

  • ホルモン受容体陽性乳がんには抗エストロゲン
  • HER2 陽性乳がんには抗HER2抗体
  • トリプルネガティブ:TNBC(上記に当てはまらないタイプ)には化学療法

トリネガ(TNBC)乳がん患者全体の15%です。

TNBC:triple negative breast cancer 

 

また遺伝性の乳がん BRCA1/2

家族性にがんを発症させるLi-Fraumeni症候群もありますが

今回はそれについては述べません。ちなみにBRCAはブラカと読みます。

 

CMF:オペ後補助療法

 

まず、それぞれの3つのパターンにおける治療薬と簡単な薬理について。

ホルモン受容体陽性乳がんの治療

 

LH-RH derivatives 閉経前乳がんのみ

Luteinizing Hormone -releasing -hormone=GnRH

Luteinizing 黄体形成

 

 

  • LHRH -releasing-stimulating peptides 

goserelin ゴセレリン

Leuprorelin リュープロレリン

前立腺がんprostate cancer にも適応

 

【補足】

  • GnRH inhibitors, peptides

Degarelix デガレリクス

Ganirelix ガニレリクス

こちらはBreast cancer乳がんには適応していない。前立腺がんprostate cancer に対してのみ。

 

 

Tamoxifene タモキシフェン

タモキシフェンのみ閉経前と閉経後に適応があります。

 

他は閉経後乳がんのみ適応

raloxifene ラロキシフェン

Toremifene トレミフェン

Fulvestrant フルベストラント ※ステムが-estr-となっています。

 

 

Fulverstrant+LHRH agonist+ palbociclib は閉経前乳がんに対して治療できる

Palbociclib はCDK inhibitor、

CDK: cycline dependent kinase サイクリン依存性キナーゼ

-ciclib がステム

 

  • アロマターゼ阻害薬は閉経後乳がんに対してのみ適応

aromatase inhibitor 

Imidazole, triazole derivatives

 

Anastrozole アナストロゾール

Letrozole レトロゾール

 

-mestane 

exemestane エキセメスタン

 

 

HER2 陽性の乳がん治療

HER2は乳がんだけではなく、胃がん、大腸がん、唾液腺がんにおいてもpositiveになることが知られています。

 

  • Trastuzumabトラスツズマブ

ハーセプチン。HER2 positiveの乳がん胃がん、大腸がん、唾液腺がんに適応。

 

  • トラスツズマブ エムタンシン Trastuzumab Emtansine

カドサイラ Kadcyla

乳がんのみ適応

エムタンシンは微小管脱重合阻害

 

  • トラスツズマブ デルクステカン Trastuzumab deruxtecan

エンハーツ Enhertu

胃がんにも適応あり

デルクステカンはカンプトテシン誘導体 

 

カンプトテシン誘導体のステム: -tecan

イリノテカン Irinotecan

 

  • pertuzumabペルツズマブ

大腸がんにも適応あり

 

  • Lapatinib ラパチニブ

確か、anthracycline系、taxiane系、trastuzumabの治療後の進行性乳がんへ適応。

 

 

トリプルネガティブ TNBCの治療

 

アントラサイクリン系医薬品、例えばドキソルビシン、それからタキサン系を含むレジメンが奏効率が高いらしいです。が、予後はホルモン受容体陽性乳がんとHER2陽性乳がんと比べると悪いです。この辺は授業で聞いた情報。

 

標準レジメンや症例ごとの最適レジメンは臨床研究が進むほどアップデートされていきますので気になる方は調べてみてください。薬剤師の国試ではTNBCの性質上、薬物治療について問われるとは考えづらいです。

 

一応、下のレジメンは覚えておきましょう。

 

FEC 

フルオロウラシル、エピルビシン、シクロホスファミド

5-FUを抜いたECレジメンも存在する

 

AC

アドリアマイシン、シクロホスファミド

*ドキソルビシン=アドリアマイシン です。

 

 

まとめ

アントラサイクリン系の副作用の心毒性は重要なので副作用で問われるかもしれません。上限量はそれぞれ異なりますがドキソルビシンの場合は500mg/m^2です。

そういえばトラスツズマブにも心臓に毒性がありますね。大学院の中間発表でアントラサイクリン系医薬品レジメンで乳がん治療した患者の心機能についての研究を聞いたのですが、トラスツズマブによる治療をしたかどうかについてあまり話されてなかったので少し残念に思ったことを覚えています。

 

良い記事、良い本がありましたら追記していきたいと思います…